2学期に入り、高校3年生たちは大学受験に向けて必死に勉強しています。そうした中、スーパーグローバルクラス(SGクラス)では、受験の先を見据えた高大連携授業に力を入れています。大学の先生方の講義を受けることで、学問の世界への動機付けを一層高め、一歩先を見据えた学びにつなげるのが狙いです。9月は3つの大学から先生方をお招きし、3年A組の教室で出張講義をして頂きました。
9月14日 上村英明教授 / 恵泉女学園大学
上村教授のご専門は国際人権法・NGO論・平和研究です。恵泉女学園大学平和文化研究所の所長や、市民外交センターの代表も務められています。この日は、<多民族社会と平和共生のありかた>をテーマに講義して頂きました。
まず、少数民族あるいは民族的少数者(ethnic minority)という概念を捉え直しました。さらに、80年代以降の国連の取り組みによって広まった「先住民族(indigenous peoples)」とは何かを踏まえて、生徒たちが高2の夏に訪問したカレン族などの山岳民族はどちらで捉えるべきか、一緒に考えました。「国境」「地図」「国有林」といったキーワードを織り交ぜながら、国民国家の形成過程でタイの山岳民族がどのような状況を生きてきたか、分かりやすく説明して頂きました。また、アイヌ民族や沖縄の問題の本質と世論の変化、カナダのトルドー内閣に見られる多民族共生のあり方など、生徒たちの固定観念に揺さぶりをかける様々なお話を聞かせて頂きました。
9月28日 Fatemee Muhammad先生 / 立命館アジア太平洋大学
Fatemee先生はバングラディシュに生まれ育ち、2009年から立命館アジア太平洋大学(APU)で留学生活を送りました。大手通信事業者での海外事業企画を経て、今は東京大学大学院博士課程で国際情報農学を研究されています。今回、APUが展開されている高大連携プログラムを活用し、Fatamee先生にお話を伺う機会を頂きました。バングラディシュの産業や教育の現状、留学を決めた経緯と留学生活の心構え、大学と企業の連携による学びの効果、企業の社会的責任と国際競争についてなど、多岐にわたって刺激的なお話を聞かせて頂きました。
9月30日 林拓也教授 / 青山学院大学
林教授のご専門は戦後日本およびアジアの経済史・経営史です。この日は<アジア諸国との関係から見た日本の課題>と題し、三つの論点から講義して頂きました。第一に、激しさを増すアジアの企業間競争においてなぜ日本が劣勢に立たされているのか、液晶テレビなどの事例を交えて、製造業における構造的な変化を説明して頂きました。第二に、日本企業がアジア進出によって果たした役割、例えば現地企業が日本的生産システムを導入したことによる生産性や技術力の向上と現在の課題について考えました。第三に、開発主義によって経済成長を進めてきたアジア諸国が直面する社会問題に触れ、「疲弊するアジア」に対して課題先進国日本が果たすべき新たな役割は何かという問題意識を共有しました。
授業に先立ち、林教授は「高校生だからといって手加減はしません。レベルを落としてしまうと、せっかくの高大連携の意義が薄れるからです。皆さんを大学生だと思って授業します」とおっしゃいました。生徒達は事前に頂いたレジュメをよく予習して臨み、難しい経済・経営に関する講義を真剣な眼差しで聞いていました。メーカーでの海外勤務経験がある担任にとりましても、実に興味深いお話が満載の講義でした。
いずれの授業においてもSGクラス1期生たちは前向きに授業参加し、授業が終わった後も先生方を質問攻めにしていました。その光景こそが、こうした高大連携授業の教育効果を最も表しているといえます。
高校生活も残り半年を切りました。持ち前の向学心と探究心を切らすことなく、一人ひとりが自らの進路を切り拓いてくれることを期待しています。
(文責:SGクラス担任 秋田)